AIは校閲の「合わせ」作業をできる?現役校閲部員が徹底解説!

こんにちは!現役校閲部員の甲谷です。今回は、AIと校閲の関係性について、これまで「ファクトチェック」「素読み」と検証してきましたが、いよいよ最後の要素「合わせ」に迫ります。皆さんは「合わせ」と聞いて、どんな作業を想像しますか?「もう手書き原稿なんてないでしょ?」と思っている方もいるかもしれませんが、実は2025年の今でも、校閲の現場では大量の手書き文字と向き合っているんです。今回は、この「合わせ」作業をAIが担えるのか、現役校閲部員ならではの視点でお伝えします!

校閲における「合わせ」とは?

まず、「合わせ」とは具体的にどのような作業を指すのでしょうか?簡単に言うと、「手書きの文字と、活字になった文字が、一字一句間違いなく合っているかを確認する作業」のことです。例えば、作家さんが手書きで原稿を書いた場合、それを編集部が活字に起こしますよね。その際に、手書きの文字と活字が正確に対応しているか、一字一句、丁寧に照らし合わせていくのです。これは、校閲の仕事の中でも非常に地道で、かつ重要な作業の一つと言えます。

「手書き原稿」はまだ現役!

「でも、今どき手書きで原稿を書く作家さんなんてほとんどいないんじゃない?」と思われた方もいるかもしれません。私もよくそう聞かれます。しかし、実際には一定数の作家さんが手書きで執筆されており、私自身も週に1、2回は手書き原稿の「合わせ」作業を行っています。特に、創作の初期段階や、アイデアを練る段階では、手書きならではの自由な発想が活かされることも多いようです。

「合わせ」作業は手書き原稿だけじゃない!

さらに、「合わせ」の作業は手書き原稿に限りません。最近では、データで原稿が入稿されることが一般的ですが、それでも編集者や校閲者がゲラ(印刷前の校正刷り)に修正指示を出す際には、手書きベースになることがほとんどです。PDFにタッチペンで直接書き込む場合も、広義には「手書き」と言えるでしょう。そして、作家さんからデータで修正の指示があったとしても、それを出版社側がゲラに反映させる際には、たいてい手書きによる「転記」作業が必要になります。この転記作業にミスがあると、作家さんの意図とは異なる文章がそのまま本になってしまう…なんて、大問題に発展しかねません。だからこそ、校閲者は転記ミスがないかどうかも、細心の注意を払ってチェックするのです。

AIは「合わせ」作業をどこまでできる?

さて、ここからが本題です。このような「合わせ」作業を、AIはどこまで担えるのでしょうか?

AIの得意な「文字認識」と「比較」

AIの技術は日々進化しており、特に「文字認識」や「画像比較」の分野では目覚ましいものがあります。手書き文字の認識精度も向上しており、活字との比較も理論上は可能です。例えば、作家さんの手書き原稿をスキャンし、それをAIが活字に起こして、元の活字と照合する…といったことは、技術的には不可能ではないでしょう。

しかし、校閲の「合わせ」はそれだけではない

しかし、校閲の「合わせ」作業は、単なる文字の比較だけではありません。そこには、人間の目だからこそできる「ニュアンス」の理解や、「文脈」を踏まえた判断が不可欠です。例えば、作家さんが意図的に旧字を使っていたり、特定の表現にこだわりがあったりする場合、AIがそれを「間違い」と判断してしまう可能性があります。また、手書きの文字は、インクのかすれや書き癖によって、AIが正確に認識できないケースも考えられます。

「代用字」の壁

ここで、冒頭のクイズを思い出してみてください。「格好」「編集」「包帯」「布団」「戦没」…これらの本来の表記は何でしょうか?(答えは後ほど!)

実は、校閲では「代用字」と呼ばれる、本来とは異なる漢字が使われているケースも頻繁に遭遇します。例えば、「格好」は「恰好」、「編集」は「編修」、「包帯」は「繃帯」、「布団」は「臥榻」、「戦没」は「戦歿」が本来の表記とされることがあります。もちろん、これらの代用字がすべて間違いというわけではなく、時代と共に使われるうちに一般的になったものも多いのですが、校閲者としては、作家さんの意図や作品の雰囲気に合わせて、適切な表記かどうかを判断する必要があります。AIがこれらの「代用字」のニュアンスをどこまで理解し、作家さんの意図を汲み取れるのかは、現時点では未知数と言えるでしょう。

校閲者の「合わせ」作業の奥深さ

校閲者の「合わせ」作業は、単に文字を拾うだけでなく、作家さんの言葉に対する深い理解と、細部へのこだわりが求められる作業です。それは、AIにはまだ難しい、人間ならではの感性や経験が活かされる領域と言えるでしょう。

まとめ:AIは「補助」として、校閲者の「目」はこれからも重要!

結論として、AIは校閲の「合わせ」作業の一部を効率化する「補助」としては非常に有効なツールになり得ます。しかし、作家さんの意図を正確に汲み取り、文脈やニュアンスを理解した上で最終的な判断を下すのは、やはり人間の校閲者でなければ難しいでしょう。AIの進化は目覚ましいですが、校閲という仕事の奥深さ、そして人間ならではの「目」の重要性は、これからも変わらないと私は確信しています。

次回の予告

さて、今回は校閲における「合わせ」作業について掘り下げてみました。次回は、これまでの内容を踏まえ、AIと校閲の未来について、さらに深く考察していきたいと思います。ぜひ、お楽しみに!

クイズの答え合わせ!

それでは、冒頭のクイズの答え合わせです!

  • 1.格好 → 恰好
  • 2.編集 → 編修
  • 3.包帯 → 繃帯
  • 4.布団 → 臥榻
  • 5.戦没 → 戦歿

いかがでしたか?普段何気なく使っている言葉にも、実は本来の表記があることを知ると、言葉の世界がさらに面白くなりますね!

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