Web3の未来を切り拓く:日本人起業家 柿木駿氏の挑戦と「チェーン抽象化」の可能性

シリコンバレーでの原体験と起業への目覚め

皆さんは、Web3という言葉を聞いて何を思い浮かべますか? 難解な技術、複雑な仕組み…そう感じる方もいるかもしれません。今回ご紹介するのは、そんなWeb3の世界をより身近に、そして使いやすくしようと奮闘する日本人起業家、柿木駿氏の物語です。柿木氏は、幼少期をシリコンバレーで過ごし、Apple本社が隣にある環境で育ちました。初代iPhoneをお守りとして持ち歩くというエピソードからも、彼のテクノロジーへの深い愛情が伝わってきますね。大学在学中に起業を志し、プログラミングを学び始めた柿木氏。コロナ禍で参加したアクセラレータープログラムをきっかけに、Web3の世界へと足を踏み入れます。

クリプト業界のオープンなカルチャーとの出会い

シリコンバレーというと、秘密主義なイメージがあるかもしれませんが、柿木氏が最初に魅了されたのは、クリプト業界のオープンなカルチャーでした。イーサリアムのロードマップにあった「シャーディング」を実用化していた「Harmony」というEVMチェーンのオフィスを訪れた際、プロジェクトの詳細を熱心に語ってくれたことが、Web3の世界に関わる原体験になったそうです。「信頼のインフラをコードで代替できる」という概念に感銘を受け、個人でもグローバルスケールの制度設計に貢献できる可能性に、人生の軸を見出したと言います。

Web3の課題と「チェーン抽象化」というブレイクスルー

クリプト起業後、柿木氏はWeb3ソーシャルの分野でサービスを開発しましたが、市場ニーズを捉えきれず苦戦。次に開発したモバイルウォレット「Light Wallet」が成功を収めたものの、複数のチェーンに関わる中で、ネットワーク間の断絶やUXの複雑さに問題意識を感じました。そこで生まれたのが、複数チェーンを抽象化し、1つのAPIで操作できる「Light」という構想です。これはまさに、Web3の大衆化を阻む壁を取り払う、画期的なアイデアでした。

Light:EVM互換チェーンを統合する開発者向けSDK・インフラ

Lightは、Ethereum、Polygon、Arbitrum、Optimismなど、EVM互換チェーンを統合的に扱える開発者向けのSDK・インフラです。開発者はチェーン固有の仕様を意識することなく、抽象化されたアカウントやトランザクションレイヤーを通じて、シームレスなUXを構築できます。ガス代がなくても最初から複数のチェーンをシームレスに利用できる体験は、多くの支持を得ました。この「チェーン抽象化」というコンセプトは、当時ほとんど誰も取り組んでいなかった領域だったことも、Lightが注目された理由の一つです。

Sequenceへの事業譲渡:課題解決を加速するための仲間入り

Lightは、ローンチ後わずか1年で、CoinbaseやPolygonなどが出資する北米のインフラ企業Sequenceに事業譲渡されました。これは単なる買収ではなく、「ブロックチェーンの断片化をどう解決するか」というビジョンが一致した結果、課題解決を加速するための仲間入りだと柿木氏は語ります。Sequenceのグローバルな開発チームと透明性のあるカルチャーは、プロダクトファーストで動ける理想的な環境であり、柿木氏にとって大きな成長の場となっています。

苦難を乗り越えて:信じてくれる人がいれば前に進める

事業譲渡に至るまでには、開発の遅延や資金難など、多くの困難がありました。特に、AIブームでクリプト市場が冷え込む中、周りの起業家が次々と撤退していく状況は、大きなプレッシャーだったと言います。それでも、米国日本人起業家の先駆者やメンター、そしてデザインを手掛けてくれた仲間たちの支えがあったからこそ、乗り越えられたと語ります。「信じてくれる人が一人でもいれば、前に進める」という言葉は、柿木氏の経験から生まれた、力強いメッセージです。

アメリカで事業を進める上で大切なこと:どんな人と組むか

アメリカで事業を進める上で、柿木氏が最も重視したのは「どんな人と組むか」ということでした。起業も売却も、結局は人と人との信頼関係が成功を左右します。契約や交渉も重要ですが、それ以上に「一緒に未来を作りたいと思えるか」が軸になったと言います。また、グローバルで戦うためには、日本とアメリカのスタートアップエコシステムの違いを理解しておく必要があります。アメリカでは、人材と資金の流動性を重視するカルチャーがあり、M&Aが一般的なExit戦略となっています。

シリコンバレーへの情熱:挑戦する人を信じる文化

柿木氏がシリコンバレーで起業するという思いが強かったのは、挑戦する人に対して「まず信じて任せてみよう」という文化が根付いているからです。何度失敗してもやり直せる環境があり、ブロックチェーンという社会システムを根底から設計し直せる技術に、強い共感を覚えています。サンフランシスコのスタートアップエコシステムは、成功のためのノウハウが洗練されており、世界中からワールドクラスの人材が集まる場所です。だからこそ、柿木氏は人生を賭けてこの地に挑戦したいと考えています。

Web3の未来:抽象化された便利なプロダクトが当たり前に

柿木氏が現在注目しているのは、Intent-based architecture(意図ベースの設計)やERC-4337によるアカウントアブストラクションなど、UXとインフラの境界を再定義する技術です。今後5年で、チェーンの違いを意識せず使えるような抽象化が進み、「ブロックチェーンが裏にあるとは気づかないが便利なプロダクト」が増えていくと予想しています。その中で、インフラレイヤーの重要性はさらに増していくと考えています。

「銀河を真っ二つにする」:柿木氏の壮大な目標

柿木氏の目標は、「銀河を真っ二つにする」こと。スティーブ・ジョブズの「銀河系に風穴を開ける」という有名なフレーズを超えたいという、壮大な志が原動力になっています。アメリカでの挑戦を支えてくれた投資家や起業家、そして仲間たちへの感謝を胸に、これからも「信ずるところに道は開ける」という言葉を胸に、全てをかけて挑戦していくと語ります。

まとめと次のアクション

柿木駿氏の物語は、Web3の可能性と、それを切り拓く起業家の情熱を教えてくれます。彼の挑戦はまだ始まったばかり。今後の活躍から目が離せません。Web3に興味を持った方は、まずは身近なプロダクトから触れてみてはいかがでしょうか。そして、柿木氏のように、世界を変えるという志を持って挑戦する人が増えることを願っています。